恋愛ノスタルジー
どうやらこの状態はベッドの中でバックハグをされているらしい。

相手は圭吾さんで間違いないだろうけど、一体全体どうしてこんな事になったんだろう。

パニックになりつつも微動だにせず、死に物狂いで思い出そうとするものの、圭吾さんがバスルームに消えてからの記憶が全くない。

もしかして私、圭吾さんを襲ったんだろうか。

いや、襲われたとか。泥酔してる私を圭吾さんが……。

……そっちの方が絶対にありえない。だって圭吾さんは私が嫌いだもの。

じゃあなに?!どうして?!分からないけど……怖い。

とにかくここから出なきゃ。

そっと圭吾さんの腕を解き、まるでスーパースローカメラ映像のような速度で布団から抜け出す。

つま先立ちのまま、ようやくドアの外に脱出した私は、ヘナヘナと廊下に座り込んだ。

息をするとバレるんじゃないかと思い、満足に呼吸が出来なかった為に窒息寸前だ。

……記憶をなくすってなんて恐ろしいのかしら。

ああ私、圭吾さんにどんな失態を見せたんだろう。

その時、午前六時を知らせるアラームが聞こえた。

荷物の記憶がまるでないけど、リビングからスマホのアラームが鳴るということは、ひと安心だ。

その時、後ろのドアがガチャリと開いた。

慌てて立ち上がった私を圭吾さんは腕を組み、憮然とした顔で見下ろしている。
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