恋愛ノスタルジー
*****

「着いたぞ」

誰かに身体を揺すられて、私は驚いて眼を開けた。

「凌央さん?……あ」

あれ、暗!ん!?どこ、ここ。えっと、確か……。

「行くぞ」

「あっ、圭吾さん!」

……そうだ、圭吾さんと鍋をしようって話で一緒に買い物に来たんだった。

やだ、こんな短時間に眠っちゃうなんて。

「ごめんなさい、寝ちゃった」

「凌央さんじゃなくて悪かったな」

「えっ!?」

もしかして今私、凌央さんの名前を呼んじゃってたのか。

ほんの少しだけ冷たく私を見下ろすと圭吾さんは、

「行くぞ」

「……はい」

ああ。ほんとあり得ない。こんな雰囲気で鍋なんて。


*****

意外な事に圭吾さんは自らカートにカゴを乗せ、食材を選び出した。

スーツ姿の長身イケメンがカートを押しながら一心に食材を選ぶ様はかなりのギャップ萌えらしく、会社帰りの主婦をはじめパートの女性までもが圭吾さんに釘付けになっている。

皆さんポォッとしているけど……分かってないわ。

言っときますけどこのイケメンの夢川圭吾さんは、好きな女性とは甘い言葉でラブラブな会話とかしてるけど、無理矢理結婚しなきゃならないドン臭い女には超冷たいんだから。

この間なんて刺し殺さんばかりの鋭い眼差しで私を……。

「彩」

……はっ?

あ、あ、彩!!

それは紛れもなく私の名前で、声は圭吾さんに間違いなかった。
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