御曹司様はシンデレラを溺愛する
うるさい。
人垣が膨らみ、身動きできなくなって来た。
「視察をされるなら警備員を呼びましょうか?」
まさか、こんな展開になるとは想像していなかった。
だが、今日は仕事を放ったらかして、ここまで来たんだ。
「お願いします」
そして、今、彼女の姿を見かけたのに、その彼女がいただろう場所にはいなかった。
また、逃げられた。
それなら、こちらにも考えがある。
姫花
もう、逃がさないからな。
それから数日経ち、待ちに待ったこの日がやって来た。
麻生本社の清掃員として、姫花が初出勤してくる。
もちろん、偶然なんかじゃない。
麻生の力を使い、指名した。
須藤 姫花と言う清掃員をよこすようにと。
向こうの会社は、なぜと不可思議だったに違いない。
まぁ、理由なんて言う必要は麻生の名前を使えば必要なかったのだが、彼女自身が裏があると思い、また逃げてしまう可能性が大きかった。
だから、彼女の仕事振りを評価して、麻生本社の清掃員に選ばれたことになっているはずだ。
それでも、2度も逃げた彼女がうちに来る可能性は半々の確率だった。