御曹司様はシンデレラを溺愛する
優里亜が可愛らしい西洋人形なら、鏡に映る自分は日本人形のように見える。
赤い着物じゃないだけ、よかったと思う。
「この髪型、似合ってないわ」
身代わりなのだから気にする必要はないのに、髪型が着物に合っていないのが嫌でたまらない。
かと言って、美容院に行くお金も勿体ないと思い、自分でもできる髪型をネットを見ながら頑張ってみた。
長い黒髪をサイドで三つ編みしてクルンと巻き、髪飾りで用意されていた大きな造花で留めれば、少しはら見えると満足している。
お見合いに行く訳じゃないもの…
そう納得して部屋を出ると、ご丁寧に用意されていたハイヤーが待機していた。
優里亜の小さな親切だが、私には大きなお世話。
「須藤様、お待ちしてました。どうぞお乗りください」
後部座席のドアを開ける運転手は、優里亜がよく指名する運転手だと気がついた時には、車が発進した後だった。
そして、スマホに届いたショートメール。
(身代わり頑張って)
簡単に言ってくれる。
今思えば、どうしてバレないと彼女は言い切れたのだろうかと思う。
不安でしかない。
なるべく名乗らない方向で誤魔化して帰れるようにと願った。