最後の恋 〜 eternal love 〜
「コーヒーをお持ち致しました。」

「ありがとう。」


そう言って私を見つめる専務の眼差しは、とても優しい。


そこには部下に見せるものとは明らかに違う色が含まれている。


仕事中は一応、上司と秘書という距離感を崩さずにお互い接しているが、言葉には出せなくても時々こうして絡み合う視線には出てしまう。


一ノ瀬君のその目に見つめられると、職場でのあるべき自分を保つのが難しくなる。


秘書としての自分を保つのに、いっぱいいっぱいになっている私を彼はきっと見抜いているのだ。


専務としての彼は、誰にでも優しくて紳士的なのに…


仕事から離れ、ただの恋人になった一ノ瀬君はやっぱり凄くイジワルだった。


…私はいつもそのギャップに翻弄されてしまう。


だけど、そんな彼の姿は私しか知らない私だけの秘密。
< 4 / 38 >

この作品をシェア

pagetop