国王陛下の極上ティータイム
クラリスがどんなに強くあろうとしても、ふと弱気になってしまうこともある。

この言い方を続けていれば嫌われてしまうと感じることもこれまでも幾度となくあったことで、その度に嫌われることは怖いと心の底では思っていた。今にして思えば、きっと見て見ぬふりをしていたのだろう。必死に隠していたのだ。

一度気づくと立ち止まってしまうようで怖かった。


「でもきみは受け入れてくれた。本当は頼りなくて、どうしようもない俺のことを。見放さずにいてくれた」


「それがどんなに嬉しかったか、分かるかい?」とランティスは言う。


「この仮面を外してくれてありがとう。その勇気をくれてありがとう」


何度も繰り返される「ありがとう」の言葉に、クラリスは照れ隠しをするように「何度も仰るのですね」と答えた。


「何度言っても足りないから、せめて何度でも言いたいんだ」


それから「本当にありがとう」ともう一度ランティスは感謝の言葉を述べた。


「ありがとうだなんて、そんなのこちらのセリフですよ」


黙って話を聞いているばかりだったクラリスの言葉が紡がれる。


「こんな性格の私を受け入れてくださってありがとうございます」


するとランティスは「きみは本当に嘘をつかないからね」と言う。


「嘘をつかない正直な人。それは俺達王族や貴族にとってはなにより大切な人だ」


< 187 / 208 >

この作品をシェア

pagetop