国王陛下の極上ティータイム



「今日の茶は何?」

「アップルのフレーバーティーにございます。ランティス様が所望されたんじゃないですか」


あれから数日後、クラリスはいつも通りに仕事をこなしていた。

ランティスの気持ちを聞いた後、ランティスにせがまれたクラリスは恥ずかしさの波にのまれながら自分の気持ちを伝えたのだった。寿命が縮んだと思うほどに大きな音を立ててクラリスの心臓が鼓動したのをこの先忘れることはないだろうとクラリスは思っていた。


「そうだったっけ?」

「そうですよ」


とぼけるランティスにクラリスは溜息を吐いた。


「ご自分が所望されたのでしょう。アップルのフレーバーティーを好まれて、わざわざ。自分で頼んだくせに忘れないでください。しっかりしてくださいよ」


怒るクラリスにランティスは悪びれた様子を見せずに「ごめん、ごめん」と笑みを浮かべながら謝った。


それ、絶対に心が籠っていないと思いながらもクラリスは大きな溜息を吐いて、思いついたように「そういえば、ディオン殿はどちらです?」と尋ねた。


「ディオン?」

「ええ、ディオン殿です。ディオン殿の分のお茶もご用意したのに、ディオン殿のお姿が見えないので。ディオン殿、どちらにおいでなのでしょう?」

ディオン殿、ディオン殿とクラリスが連呼するのが面白くないと思ったランティスは「別にディオンなんていいでしょ」とそっぽ向いて答えた。

本当は、ディオンを書庫の方に向かわせて資料を探してもらっているところなのだが、決して教えたくないとランティスは子どものようなことを思ってしまった。

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