国王陛下の極上ティータイム
ディオンが言うにはランティスの体調は戻りつつある様子だが、本当に大丈夫だろうか。

クラリスの脳内に浮かぶランティスはいつもヘラリヘラリと軽い調子で笑っている。そんなランティスが弱っている姿なんて想像できないのだ。

それにしても病床で自分の名前を呼んでいたなんて。それをディオンも薬室長も知っているなんて。それを思うとクラリスの顔には熱が集まる。

丁度その時やかんは水蒸気を吹いて湯が沸騰したのを告げた。クラリスはその音に驚いてびくりと肩を上下させたが、深呼吸してい息を吸い込むと火からおろす。

そしてカモミールの入ったポットの中に湯を注ぐと蓋をし、茶室を出た。

ランティスの自室の前まで来ると、その前で部屋を守っている衛兵に呼び止められた。


「陛下への謁見は許可がなければできません」


厳しい目を向ける衛兵に「薬室長より許可状を頂きました」とクラリスは懐にしまっていた許可状を見せる。

衛兵は怪訝そうな顔をしたが許可状を確認すると「確かに」と返事をして道を開ける。



目の前に立ちはだかる大きな扉がいつもよりずっと大きく見える。

自分とクラリスを隔てているように、そびえている。それはランティスとクラリスの埋まることのない身分差のようにも思えて、クラリスは少し苦しかった。

けれどいつまでもこうしているわけにもいかない。

クラリスはひとつ深呼吸をすると扉をノックした。


「失礼いたします」


扉は見かけよりもずっと簡単に開いた。
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