国王陛下の極上ティータイム
ポットに湯を注ぐと、中の茶葉が躍りエメの香りがふうわりと立ちこめる。その様子をじっくり見つめながら、ゆっくりとカップに注いだ。

赤みがかったエメ特有の水色(すいしょく)は、白いティーカップによく映える。


「香りがたつな」

ブランはティーカップを鼻に近づけて香る。

「冷めないうちに頂こう」

そう言ってブランは一口すすった。


「…これは、確かに上手いな」

ブランは目を見開いてそう呟いた。


「ありがとうございます」

クラリスは頭を下げながら自分も一口飲む。

その味を感じ取った瞬間、目を見開いた。クラリスの知っているエメの味と違う。

「どうかしたか?」

ブランはクラリスの様子を不思議そうに見つめる。


「味が、違います。私の知っているエメではない」

クラリスは立ち上がると茶葉が入っていた缶の表示を見た。

しかし「エメ」と茶葉の名前が書かれているだけで、そのほかは何も書いていない。

可笑しい。エメは確かに仄かに甘みがあり、まったりとしたコクのある茶だ。

けれどここまで甘みと香りが強く出るなんて今までにないことだ。一体どうして、砂糖すら入れていないのに。


「ああ、その茶葉は南産なんだ」


首を傾げるクラリスにブランはそう言った。


「南産?」

「ああ。この国の南の標高の高いところで採れた茶葉なんだ。一般的に出回っているのは標高の低い西産のものだから、多少香りや味が違ってくる」


産地によってこんなにも味が違うものなのかと、クラリスは驚いた。

全く別物と言われても納得できるくらいに、いつも飲んでいたエメとは違う。

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