国王陛下の極上ティータイム
驚いているクラリスを見たブランは、クラリスの持っている缶が置かれていた隣の缶を取り出して「これが西産」と差し出した。

その缶をあけるとクラリスが知っている茶葉の香りがした。

もう一度南産のエメの茶葉を嗅ぐと、やはり全く違った。ふうわりと漂う匂いの濃さが違うのだ。


「同じ茶葉でも産地が異なるだけで、こんなにも違うものですか」

「ああ。これだから茶は面白く、奥が深いのだ」

ブランは笑った。「そうですね」とクラリスも笑い返した。

産地によってこんなにも味も香りも違うのか。

クラリスははたとひらめいた。


「ブラン殿、ルネット産のエメはありませんか?」

「ルネット産?」


突拍子もないことを言うクラリスにブランは驚きを隠せない。


「ルネットと言えば、国内でも有数の茶の生産地だな。高山地帯だと聞く。しかし、なぜルネット産なんだ?」

「私はいつも西産のエメを飲んでいました。けれど先ほど南産のエメを飲んで、その味と香りの違いにも驚きました。甘みが強く、後味の渋味が少ない」

「標高が高い地域の茶葉ならば渋味の少ない茶になるのではないかと、そう思ったわけか」

「なるほど」とブランは腕組みをした。

「しかし、ルネット産のものは切らしてしまっているのだ。すまないな」

「ならば他の産地のものはございますか?」

「ああ、それはいくつかある」

クラリスはその言葉を聞いてほっと安堵し「どこの産地の茶葉があるのか教えてください」と申し出た。
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