国王陛下の極上ティータイム
クラリスはその言葉に頷いた。

クラリスは王族や貴族と結婚したいとは微塵も思っていない。

それどころか、本当のことはあまり出さずに相手の手の内を探るような態度をし、相手が格下の平民だと判断するや否や横柄な態度をとる貴族に辟易していた。

オルレアン伯爵や夫人は、使用人に対しても誠実であろうとする姿勢が見え、使用人にも理解がありクラリスは敬愛していたのだが、時折屋敷に訪れていた貴族などとは関わりたくなどないと嫌悪感を持っていた。

王宮付きのお茶係の仕事を引き受けた理由は、今まで世話になったオルレアン伯爵の顔を立てることの他には、好きな茶を仕事にできるからというだけだ。

まして、ランティス国王陛下なんて。新たな主人であるとは言え、クラリスは到底好きにはなれないと思ったくらいだ。

伝えたいことを遠回しにするようなまどろっこしい話し方、胡散臭い笑顔。見ていて腹が立つ。思い出すだけで苛立ってくる。


「珍しいよ、クラリス殿は。普通の年頃の娘ならば貴族や王族とのそういった関わりを望むだろうに」

そう言った後で慌てて「いや、決して貶しているわけではない」とブランは付け加えた。

クラリスはそんなブランに「気にしていません」と笑った。


「自分が普通の娘と異なる思考をしていることは、自分でも分かっていますので」

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