国王陛下の極上ティータイム
普通の娘なら、貴族や王族との結婚を夢見、友人と話に花を咲かせるほど話し好きになるのだろう。

しかしクラリスはそのようなことは全く望んでおらず、花を咲かせるほど話したりはしない。それどころか、できるだけ人と私的な会話はしたくはないし、好きな茶の香りに包まれている方がずっといい。

これを異端だとせずになんとするか。クラリスは冷静に自分を分析していた。


「違う、そうではなくて。だからこそよいのだと思ったのだ。その方が私も仕事がしやすい」


その言葉にクラリスは目を見開いて思わずブランの顔を見る。


「クラリス殿が自分の仕事に一心不乱な人柄であることはこの前のことでよく分かった。そのような人物と仕事をできるのが嬉しいと伝えたかった」


優しい表情をしているブランを見て、更にクラリスはなんと言えば良いのか分からず「こちらこそ」としか言えなかった。

口下手な性格が褒められたためしなど一度もなかった。伯爵家でもコレット侍女長は無駄口をしない真面目な働きぶりだと認めてくださったものの、他の侍女達には「仕事意外では喋らない、つまらない子」と陰口を叩かれ、「年頃なのに恋愛にも興味ないなんて」と言われたことは両手両足を使っても数え切れないほどだ。

それなのに、だからこそいいのだと、働きやすいのだと言ってくれる人がいるなんて、クラリスには想像すらできなかった。夢にさえ思っていなかったのだ。


「こちらこそ、よろしくお願いします」


クラリスは深く頭を下げた。


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