controller
そしてその日はやって来る。

今日は無事だったとしても…明日は乗り越えられないかも知れない。

アタシは何度も悪化して回復したが
そろそろその時が近づいていた。

アタシの横にはレオがいて、
今も手を握ってくれている。

そして意識が薄れている中、
母が来て…父が来て…
ハナエが来て…
そしてタクミが来た。

「キョウ…ゴメン。」

タクミが最後に言った言葉だ。

アタシを支配し続けたタクミが握りしめてたコントローラーがその手からやっと外れる気がした。

アタシは最後の最後に解放されてレオに心を開く。

そしてレオの手を握って…その時を待つ。

「キョウ…」

レオの声が遠くに聞こえて
アタシは今までの色んな出来事を思い返した。

初めてタクミに身体を預けた日、
バカだったな…中学生だった未熟な自分の浅はかさを思い出して笑ってしまう。

「俺と付き合わない?」

今度はレオに救われた日のことを思い出し
アタシはレオの大きな手に抱きしめられた夜を思い出す。

「別れて。」

タクミと愛し合い、レオに別れを告げた夜
レオを泣かせてしまった夜。

アタシの頬を熱いものが流れていく。

後悔してももうすぐアタシの全てが消える。

愛はそこにあるけど…
居なくなったら消えてくだけだ。

「キョウ、頑張れ!」

レオの励ます声が聞こえて
アタシはかろうじてレオの手を握り返した。

まだ離れたくないと思いながら…

ただ生きようともがいた。

苦しくてこれ以上無理だと思っても
アタシはその手を離したくなかった。



< 105 / 116 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop