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それぞれの道
あれからタクミを避けて
アタシたちの間にまた時は流れた。

大学3年になって就職活動が始まり
将来を考えることが日常になった。

そして何社か受けてアタシは大手のスポーツメーカーの企業に就職が決まり
タクミは全日本の代表に選ばれて
バレーボールで大阪の企業に就職が決まった。

子供の頃からずっと側にいたアタシとタクミは
初めて離れ離れになる。

タクミは大阪でアタシは都内に残る。

ハナエもタクミに付いて行こうと思ったが
タクミはほとんど遠征で何処に居ても同じだと言われ
ハナエも都内に残ることにした。

医学部のレオはまだまだ大学生だが
高学年になるにつれ忙しくなり
アタシたちが集まる機会はあまりなくなった。

そして大学の卒業式が来て
アタシの母親とタクミの母親が写真を撮りにやって来た。

アタシは袴を履いて、
タクミはスーツを着た。

久しぶりにあったタクミは世界へ出て
また少し男らしくなった気がした。

アタシたちは気まずくてほとんど会話しなかった。

卒業式にはレオもハナエも来て、
夜はみんなで集まって飲んだ。

卒業したらタクミは直ぐ大阪に引っ越す。

物心ついた頃から一緒に育ったタクミと
今度こそ本当にバラバラになるのだ。

アタシたちは学生時代最後の夜を複雑な気持ちで過ごしていた。

飲みすぎたみたいで少し酔いが回って来て席を立った。

鏡を見るとヒドい顔をしてる。

久しぶりにタクミに逢ったのに
こんな顔でガッカリされただろうか?

少し気合を入れてトイレから出ると
タクミが化粧室の入り口に立っていた。
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