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ハナエのお腹にタクミの赤ちゃんがいるかもしれないと思うと無性に腹が立った。

タクミは卒業式の夜から一度も連絡してこない。

あの夜、アタシがタクミを避けてレオと消えたのを怒ってるからだ。

アタシは思い切ってタクミに連絡してみた。

「もしもし。」

懐かしい声がして
アタシの胸は馬鹿みたいに踊ってる。

「元気にしてた?」

「何か用?」

ぶっきらぼうな返事がアタシを傷つける。

「ハナエに逢ったんだけど…」

「うん。で?」

「結婚するって言ってた。」

タクミはしばらく何も言わなかった。

その沈黙が今のアタシには地獄の審判を待つ様な気分で
やたらと長く感じた。

「だから?

キョウに関係あんの?」

その冷たい返事にアタシはキレた。

「別れたんじゃないの?」

「今さら別れて欲しいとか言うつもりかよ?」

「そうじゃなくて…タクミの気持ち全然わかんない。」

「俺もキョウのことがわかんない。

キョウはあの夜レオと消えて
俺に会いに来なかっただろ?

俺とキスしたくせに!」

「アタシは不安なの!
タクミがどう思ってるかわかんなくて不安なの。」

今のアタシの頭の中にハナエの事なんか無かった。

友情を壊したくないなんて綺麗事をもう言っていられなくなった。

レオの事もハナエの事もどうでもよくて
アタシはただタクミが欲しかった。

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