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カレンさんはアタシの顔をジッと見て

「最近、レオとはどう?」

と聞いた。

アタシはカレンさんの目を見ずに答える。

「どうって…仲良くやってますよ。

レオは忙しくてなかなか夫婦の時間も持てないですけど…」

「そう。」

気持ちを悟られないように
カレンさんの赤い爪がワイングラスの淵をなぞっていくのをただ目で追った。

「今朝…タクミと2人で帰ってきたよね?」

その瞬間、アタシは顔をあげた。

「あ…それは…初日の出が見たくて…」

「車に乗ってる2人を見たの。

なんだか…普通じゃなかった気がして。」

アタシの中で心臓がバクバクと音を立てている。

その音がカレンさんにも聞こえてるんじゃないかと思うくらいアタシは焦っていた。

「ふ、普通じゃないって?」

「キョウ…アタシはね、責めてるワケじゃない。

そりゃレオは大事な弟だし…2人が上手くいってくれたら嬉しいけどね。

でも…どうにもならない感情っていうのがある。

キョウは最初からずっとレオの他に好きな男がいる気がした。

それがタクミだって気がついたのは2人が結婚した後だった。」

多分否定したところでカレンさんには通用しないと思った。

「本当は病気だってわかる前に…レオとは離婚するつもりでした。

タクミと一緒になりたくて…

でもそんな自分勝手なことは許されなくて
罰が下ったみたいに病気になって…

レオの有難さを知ったんです。

だから…アタシはレオに感謝してるし…
裏切ったり出来ないって…

でもダメなんです。

タクミに逢うと…顔を見るだけで…
どうしようもなくて…」

カレンさんはアタシの話を黙って聞いていたけど
多分それは到底納得のいく話じゃないことは
話してるアタシにもわかっていた。




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