controller
愛されるということ
アタシはレオとなかなか別れられなかった。

レオはアタシと絶対に別れないと言って離婚に応じなかった。

それでもレオはいつも通り優しくて
アタシが別れると言ったことなど
忘れてしまったかのように普通に暮らしている。

アタシはレオに抱かれることを避けた。

レオとは同じベッドで眠らず
リビングのソファーに一人で眠る。

レオが宿直の夜もアタシはソファーで眠った。

夜中に帰ってきたレオがアタシを抱き上げ
ベッドに連れて行く夜もあったが
アタシは気がつくとソファーに戻って眠る。

「手は出さないから安心して。」

レオはそう言ったけど
アタシはレオが嫌で避けてるワケじゃない。

「同じベッドで眠れるほど図々しくないよ。」

「じゃあ手を出すって言ったら?

夫婦なんだからキョウは俺と寝る義務がある。」

レオがアタシの手を掴んでベッドに連れて行こうとした。

「レオは他の男を思ってる女を抱ける?」

レオは一瞬固まってアタシの手を離した。

「酷いこと言うんだな。

でもどんなにキョウがタクミを想ってても
キョウは俺の妻なんだ。

俺が別れない限り、タクミとは許されない。」

「タクミと一緒になりたくないって言ったら嘘になるけど…
別れたいって思うのはそれだけが理由じゃない。

レオをこれ以上傷つけたくないの。」

レオはカッとなってアタシの腕をもう一度掴むと
ベッドの上に抑えつけた。

「そう言えば俺が納得するとでも?

キョウがオレを傷つけるなら
オレもキョウを傷つけてやる。」

レオに無理矢理抱かれても
アタシはそこから逃げ出せない。

「レオ…ごめんね。」

そう言ってアタシが泣くと
レオも泣いた。

「キョウ…時間をくれないか?

少し整理する時間が必要なんだ。」

アタシの泣く姿を見て、
レオはアタシよりずっと傷ついていた。

アタシはレオを抱きしめて、何度も

「ごめん。」

と謝るしかなかった。

次の日、レオは突然、病院に休暇を願い出て
アタシの前から姿を消した。





< 86 / 116 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop