エリート医師のイジワルな溺甘療法
ふと彼以外の視線を感じて周りを見回すと、ソファセットを一つ挟んだ位置にリビング家具の担当社員がいて、こちらの様子を伺っていた。
私と目が合うと「お決まりですか?」とにっこり笑う。
ひょっとして、今のやりとりを聞かれていたんだろうか。
男子社員でよかったと、心底ほっとしながら手をあげて呼び、カタログを持ってきてもらった。
色、希望、価格、品質を彼と相談してソファセットの購入を決め、今度はダイニングセットのフロアに移動する。
こちらはソファセットに比べればすんなりと決められたので、彼をインテリア小物のコーナーに誘った。
前から目をつけていたリトグラフがあるのだ。
寝室の枕もとの壁に飾ると素敵な、ヨーロッパの街並みがモノトーンで描かれた横長のもの。
シンプルで、落ち着いた雰囲気にぴったりなのだ。
彼に見てほしくて連れて行くと、携帯の着信音が鳴っていることに気がついた。
「あ、私の」
ショルダーバッグから取りだすと、あまりなじみのない電話番号が表示されている。けれど固定電話で、しかも市内局番なので、慎重に出てみた。
「はい、瀬川です……え!? ほんとですか!? はいっ……あ、あの、ちょっとお待ちください」
ただならぬ雰囲気を察した彼が、私の腰を抱いて、心配そうに顔を覗き込んでいる。
「どうした? なんかあったのか?」
「はい。雄介さん、あの犯人が、捕まったって」
電話は、警察署からだった。