エリート医師のイジワルな溺甘療法


私は告訴をするかどうか聞かれ、彼と相談して迷った末に、告訴を取り下げることにした。

改めて事情聴取されたり、現場検証に立ち会うこともあるらしく、面倒をかけることもあると説明されたからだ。

結局のところ私は骨に異常はなかったわけだし、犯人に対して腹は立つけれども、これ以上関わりたくないのが本音だった。

彼も理解してくれて、『その方がいい』と言ってくれた。

もうこの事件のことは、忘れよう。


「昼メシ、食べ損ねたな。腹が減った」


彼がぼそっとつぶやいたので、思わずクスッと笑ってしまう。

なんだか、いつもお腹を空かせているような気がするからだ。


「そうですね、お腹空きましたよね」


警察から連絡を受けてマホガニーを出たのは午後二時くらい。今はもう四時近くになっている。


「外食と、おうちご飯とどちらがいいですか?」

「もちろん、おうちご飯だな。一緒に作ろう」

「なにがいいですか? お肉はありますけど、買い物に行かなくちゃ」

「そうだな、あそこのスーパーでいいか?」


立ち上がった彼が差し出した腕に捕まって、駐車場に向かう。


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