エリート医師のイジワルな溺甘療法
私生活は、わりと無頓着なのかもしれない。
「それなら、本棚を買われたらいかがですか? ソファもあった方がいいですよ」
「いや、家具は、徐々にそろえていきたいんだ。そうだな……とりあえず、ベッドを買おうか。俺の場合、布団だと敷きっぱなしになる」
布団があるのに、まずベッドを買うのか!と心の中で突っ込みを入れつつ、レイアウト図を指す。
「それでしたら、ベッドは三階です。エスカレーターを上がって右側の奥にあります。どうぞ、ゆっくりお買いものをお楽しみください」
マニュアル通りに言って、微笑みながら丁寧に会釈をする。
ああ……今、食事に誘う大チャンスだったのに……と思いながら、売り場へ向かう先生の背中を見つめる。
せっかく会えたのに、タイミングがつかめなくて全然言えなかった。
今は私が仕事中だから仕方がないかな。
でも、こんなときでも上手に話題を作っていって、さらりと自然にお誘いできるといいのに。
私が肉食系女子へ変わる日は、はるかに遠いみたいだ。