エリート医師のイジワルな溺甘療法


私生活は、わりと無頓着なのかもしれない。


「それなら、本棚を買われたらいかがですか? ソファもあった方がいいですよ」

「いや、家具は、徐々にそろえていきたいんだ。そうだな……とりあえず、ベッドを買おうか。俺の場合、布団だと敷きっぱなしになる」


布団があるのに、まずベッドを買うのか!と心の中で突っ込みを入れつつ、レイアウト図を指す。


「それでしたら、ベッドは三階です。エスカレーターを上がって右側の奥にあります。どうぞ、ゆっくりお買いものをお楽しみください」


マニュアル通りに言って、微笑みながら丁寧に会釈をする。

ああ……今、食事に誘う大チャンスだったのに……と思いながら、売り場へ向かう先生の背中を見つめる。

せっかく会えたのに、タイミングがつかめなくて全然言えなかった。

今は私が仕事中だから仕方がないかな。

でも、こんなときでも上手に話題を作っていって、さらりと自然にお誘いできるといいのに。

私が肉食系女子へ変わる日は、はるかに遠いみたいだ。


< 23 / 173 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop