エリート医師のイジワルな溺甘療法
「今日は六時までです。先生は、家具を見に来たんですか? 売り場のご案内しますよ」
カウンターにある売り場のレイアウト図を指しながら言うと、先生は少し首を捻った。
「まだなにを買うか決めていないんだ」
「え、それは、どういうことですか?」
思わず先生をガン見する。
う~んと唸って首を傾げているが、どことなくひょうひょうとしていて、あんまり考えていない様子だ。
中にはたまたま寄っただけというお客さまもいるけれど、そんな人は大抵サービスカウンターには寄らない。
自由に店内を見て回って、帰っていくものだ。
先生は『決めてない』だけで、家具を買う気はあるみたいだけど……?
「実は俺、帰国してからずっとホテル暮らしだったんだ。それを二週間ほど前に止めて、この近くのマンションに住み始めたんだけど、まだ家具が揃ってないんだ。とりあえず寝られればいいってことで、布団しかない」
「えええっ!? ……先生、それは家具がなさすぎますよ。不便でしょう?」
「いや、備え付けのクローゼットもあるし、特別不便でもないんだが……まあ、本は床に積み上げてるし、確かに散らかりやすいかな?」
先生は、私の診察の時にマホガニーが近くにあることを知り、『そうだ、家具を買おう』と思い立ったという。
テーブルもないが、食事はキッチンカウンターで済ませるから、日常困ることはないとも言った。