エリート医師のイジワルな溺甘療法


「うわー、瀬川さん。今日は忙しかったし、疲れたでしょ。大丈夫?」

「労災でるんだから、ムリして仕事しなくてもいいのに」

「骨は元通りにくっついてるの?」


松葉杖をついて仕事を上がっていく私を見て、事務所に居合わせた同僚たちから声がかけられる。

その一つ一つに返事をして、退勤の挨拶をし、ゆっくり女子更衣室に向かう。

更衣室の中は誰もいなくて、張り詰めていた気がぷつんと切れた。

一気に疲労を覚えて、糸の切れた操り人形のように、壁際に置いてあるソファに身を沈める。

程よい硬さのクッションが疲れた体に心地くて、しばらく動きたくない。

頭を背もたれに預け、飾り気のない白い天井をぼんやり眺めた。


「やっぱりこのソファ、座り心地が最高」


マホガニーはインテリアショップだけあって、従業員用の家具も質がいいものが置いてある。

これは店長の方針で、更衣室だけでなく、休憩室にも売り場と同等の品質のものが置かれている。

だからマホガニーの休憩室はカフェみたいにすごくお洒落なのだ。

良いものを置く理由は、実際の使い心地をお客さまに説明できるし、感覚も洗練されるためらしい。


「脚はどうなってるかな」


右足をしみじみ眺めるとかなり浮腫んでいて、見た目はゾウの足のよう。

いきなり日曜日のフルタイムは無茶だったのかな。

帰ったら、念入りにマッサージしなくちゃいけない。


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