エリート医師のイジワルな溺甘療法


ぼんやり先生を眺めて、ときめいている場合じゃない。

なんとか話をそっち方面に持っていかなくちゃ。でも、どうやって? 真剣な話をしていたのに、不謹慎だって思われる?


「あ、あのっ……先生は、今までずっと家具を見ていたんですか?」

「ん? 見てないぞ。俺はそんな家具好きじゃないからな。六時ちょい過ぎに来て、瀬川さんを待ってたんだ。でなきゃ、声をかけないぞ」

「ええ、私を!?」

「そう。仕事は六時までって言っていたのになかなか出てこないから、サービスカウンターまで行ったんだ。そしたら、もうとっくに帰ったって聞いて、焦ったぞ。捕まえられてよかった」

「すみません、更衣室でのんびりしちゃってて……」


まさか私を待っていたなんて、これはどういうことなのか。

家具のことで訊きたいことがあるなら、店内には販売スタッフがたくさんいるし。そもそも家具好きじゃないって言ってるし、布団しかないほどに無頓着だし。


「先生は、どこで待っていたんですか?」


ああ……こんなことを訊きたいんじゃないのに……。私ったら、ほんと不器用。自分自身がじれったい。

先生は「待ってたのは、あそこだ」と言って、ショップ入口の方を指す。


「あの植え込みのところに座っていた。あそこなら、瀬川さんがどこから出てこようが、見つけられると思ったんだ」

「そうなんですか。正解です。あそこなら見逃すことないです」


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