【惑溺】わたしの、ハジメテノヒト。
放課後
「悪いな手伝わせちゃって」
そう言いながら加藤先生がたくさんのプリントを持って教室に入って来た。
「いいえ、大丈夫です。授業中にぼんやりしてたあたしが悪いんだし」
プリントの山を並べる手伝いをしながら
「でも先生、あたしを当てる率高いですよね」
と、少し嫌味を言ってみる。
「え、そうか?」
先生のびっくりした顔に思わず小さく吹き出した。
「そうですよ。けっこうよく当てられます。プリントこっちからまとめて綴じて行けばいいですか?」
「ああ、全部で40部あるから。
そっか、俺上田ばっかり当ててたか。無意識だったなー」
頭をかきながらそうつぶやく優しそうな加藤先生。
「そんな真剣に受け取らないで下さいよ。ちょっと文句言いたかっただけです」
私は思わず笑いながら首を横に振った。
すると顔を上げて、そうか、と納得したように頷いた。
「俺上田の声好きなんだよな。聞いてると落ち着く感じがちょっと俺の知り合いに似てて」
「え? あたしの声ですか?」
ドキっとして 両手で喉をおさえる。