【惑溺】わたしの、ハジメテノヒト。
西野くんと同じソファーに座るだけなのになんだか妙に緊張する。
「年上の人と同棲してるって噂は本当?」
あたしは動揺を隠すようにコーヒーに手を伸ばしながら聞いた。
「それは本当」
「じゃあ、女の人に貢がせてるって噂は?」
「さぁ。勝手に俺に物を買いたがる女はいるけど」
……すごい。
頼んでもいないのに女の人が勝手に物を買ってくれるなんて、やっぱり西野くんってすごくもてるんだ。
隣に座る綺麗な横顔をこっそり観察して、ごくり、とコーヒーを飲んだ。
「じゃあ、ホストクラブで働いてるって噂は?」
「それは嘘」
西野くんは呆れたように小さく笑った。
嘘なんだ。
そうだよね、高校生がホストなんてしないよね。
ちょっとホッとしながら顔を上げると、壁一面にとりつけられた棚に整然と並んだお酒のボトルが目に入った。
「あのお酒すごいよね。一緒に暮らしてる彼女の趣味なの?」
見たこともないくらいたくさんの種類のお酒。
カクテルを作るための綺麗な銀色の道具。
まるで本物のバーみたいな棚にみとれながら聞くと
「いや、俺の」
と、平然と西野くんが言った。