あなたの心を❤️で満たして
教授はメニューを見ながらカフェラテを頼んだ。
私はいつも此処で飲んでいたカフェオレをお願いした。



「それで、私にお話というのは何ですかな?」


ウエイトレスが遠ざかると、教授は興味深々で聞いてくる。
私はオシボリで手を拭きながら言い渋り、膝の上に乗せているバッグの中身に思いを寄せた。


「……実は、結婚する前に唯一の肉親だった祖母が亡くなりまして」


そう言うと教授は一瞬だけ気の毒そうな表情になった。

でも、私がそれは病気だったから仕方のないことなんです…と言うと頷き、続けて話し易いように、それで?と問い掛けてきた。


「私は幼い頃に祖父母の元に引き取られました。両親が離婚したせいでどちらも育児を放棄したのが原因なんですけど」


またしても暗い表情になる教授にそんなことを話したい訳じゃないと思い始める。

私はあの家を買ったのが和田教授なんですか?と聞きたいんだ。
これ以上回りくどい話をしたところで時間ばかりが流れてしまい、勿体ない。


「……あの、この最近、家を購入されませんでしたか?」


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