あなたの心を❤️で満たして
今日は何も混ぜる気が起きないから、お塩だけの簡単なものにした。

黒沢さんは今日もそれを食べて仕事へ行き、そして、また帰ってくるのかどうかも分からないーー。


…ふと、私の人生は最初から最後までこんな感じで終わるのか…と思った。

親が私を見放したように、旦那様からも見放される人生をーーー



「お祖父ちゃん……本当にどうしてこんな家に嫁がせる約束をしたの……」


亡くなった祖父への逆恨みを口にして、家を出れば済むことだと慰める。


今日彼を見送ったらこの家を出る準備を始めよう。
廣瀬さんが退勤したら、それに合わせて去ればいいのだーーー。


そう決意したところへ彼女が来た。
甲高くて威勢のいい声で「おはようございます」と言うのが聞こえ、私はキッチンの出入り口から顔を覗かせた。



「廣瀬さん、おはようございます」


彼女は靴を脱ぐと歩いてきて、今日は初夏のような陽気になりそうですよ…と喋った。


「うちの庭木も新芽が随分伸びてきて、若葉の色が濃くなって参りました」


そう言うのを聞いて緑がある家はいいな…と思う。

< 149 / 283 >

この作品をシェア

pagetop