あなたの心を❤️で満たして
やってられんよな…と父は嘆き、どうする?と俺に問いかけてきた。


『何をだ』


手紙を封筒に直しながら声を返す。
父は俺の雰囲気が殺気立っていると感じたのか……


『……いや、縁談をどうするかと思ってね』


様子を窺うような視線を向け、黙って俺の言葉が戻るのを待った。


それは多分、拒否をしても良いという意味なんだろうと思う。

幾ら会長だったじい様が決めた縁談だとしても、リスクを背負ってまで全うする義務はないと考えたのではないか。

だが……



『俺は……』


胸の中に怒りと切ない気持ちが入り混じっていた。
懸命に祖母の看病を続けている女性が頭に浮かび、彼女を守るのが自分の使命のように感じた。


『俺は、あの人との縁談を断ろうとは思わない。一緒になって、ずっと守り続けていこうと思う』


ストイックに研究を続けてきた俺だからきっと出来る。

何故だか、そんな風に思った。



『そうか』


父はそう言うと、頼んだぞ…と俺に向かって笑った。

お前のことだからそう言いそうだと考えていたと話し、敵を欺くには策も必要だぞと教えてくれる。


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