あなたの心を❤️で満たして
（やっぱり形だけの夫婦でいいと何気に思ってるのかもしれない）


完全な僻み。
でも、そうとしか思えなくて……。



「お元気を出して下さい留衣様。明日はお坊っちゃまも食べると申してましたし」


何とか元気づけようとして廣瀬さんが明るく話す。
側で歩く彼女を見つめながら、改めて一人ではないのだと思い出した。


「……そうですね。また明日作ります」


残念だけれど今朝は仕方ない。新薬の開発は黒沢さんにとって大事な仕事だもの。



朝食は廣瀬さんと二人でゆっくり平らげた。
彼女はどれも美味しいと言ってくれて、明日だけじゃなく、これからは毎日私が朝食の準備をすればいいと勧めてくれた。


「男心を掴むには、胃袋を掴めと申しますからね」


腕前を発揮して、精々厚志様を虜になさいませ…と笑った。



（…そんなこと出来るのかな。そもそも私は、彼の心を掴みたいと思ってる…？）



そう考えたけれど、口には出さず曖昧に笑い返した。

急いで出て行った人の心を掴むよりも前に、ゆっくり話がしてみたい…としみじみ思ってしまったーーー。


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