第一王子に、転生令嬢のハーブティーを


「ミントは確かに素晴らしいハーブです」



 ミハイルは歩きながら言う。



「お茶はもちろん、料理に添えれば彩りになる」


「煮出したら虫除けにも使えますしね」


「ええ。しかしアリシア様、育てる面でミントの大きな特徴といえば何でしょうか」


「特徴?うーん……やっぱり強いことかしら」



 アリシアの答えに頷いたミハイルは、ちょうど温室の裏側辺りで立ち止まった。



「あの生命力の強さは、一方では利点ですが、このような事態を引き起こすこともある」



 目の前に広がる状況を見て、ミハイルの言いたいことを悟った。


 地面一面の緑。一見雑草に埋め尽くされているようだが、よく見るとそれらは全てミントだった。単体では爽やかな良い香りも、これだけ大量になるともはや異臭と言って差し支えない。



「これは……」


「僕への嫌がらせです」



 言葉を失うアリシアに、ミハイルは淡々と続ける。



「この区域を担当していた先代の庭師の仕業ですね」


「先代の?」


「一年ほど前、彼は辞めさせられ、代わりに僕が雇われました。正直、彼の仕事ぶりは褒められたものではなく、今と比べて庭園が随分と荒れていたのですが」



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