第一王子に、転生令嬢のハーブティーを


 ミハイルは元々、町で働くごく普通の庭師だったそうだ。しかし若いながらに腕は評判で、それを聞きつけたイルヴィスが王宮の庭師へと迎え入れたのだという。

 だが、その先代庭師がそれを良く思うはずがない。彼はいくつもの嫌がらせを仕掛けていった。このミントもその一つ。



「温室の裏手ですからね。なかなか気がつきませんでした。そして気づいた頃には既に時遅しといった感じで」



 アリシアの頭に、『ミントテロ』という言葉が浮かんだ。

 ミントはとにかく生命力が強い。一度種をまけば、地下茎がグングン伸び、その上新しくできた種子をばら撒き、みるみるうちに辺りを侵食していく。

 そして、ミントの生命力は他の植物を凌駕するため、放っておくと他の植物を枯らしてまで繁殖する。

 しっかりと区切られたプランターに入れて、花が咲きそうならなるべく早く摘むのがミントを育てる上で鉄則だ。



 このミントの生命力を利用した嫌がらせがミントテロと呼ばれるというのは、前世で本により得た知識である。

 数年前、それを思い出したアリシアは、本当にそこまでの生命力があるのかと気になり、実験した。そして酷い目に遭った。



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