蘇りのウタ
「二重底になってたのね」


あたしは驚いてそう聞いた。


開けた底の下には狭い空間があり、そこには黒い箱が置かれていた。


カケルはその箱を取り出した。


「念のために、こんなものもあるんだ」


そう言い、箱を開けるとそこには包丁が入っていた。


真新しくてキラリと光る包丁に一瞬ヒヤリとする。


「小屋の食料が底をついて、それでも森から出られなかった時の為」


カケルはそう言うが、あたしは納得できなかった。


いくらなんでもここまで必要だろうか?


小屋の数だって、どう考えても多すぎる。


「この小屋や食料は本当に自殺志願者や遭難者の為のものなの?」


そう聞くと、カケルは少し困ったように眉を寄せた。


「そうだね。ここまで念入りに生き抜く道具があるって時点で、疑うよね」


カケルは小さくため息を吐き出すと、あたしたちを見つめた。


「この森の中で儀式を行い、失敗することは珍しくない。森から出られなかったり、さっきみたいな骨だけになった魂に襲われることも、もちろんある」
< 139 / 245 >

この作品をシェア

pagetop