身代わりの姫


それからも、何も変わらなかった。

勉強も訓練も。



間もなく、18歳になる。


先に18歳になったシリルが、リリアの兄である王太子の護衛隊に入ることが決まった。


それは、めでたいことではあっても、アリアにとって、いつでも会える状況ではなくなる、ということだった。



以前に雨宿りした、小屋に2人で来ていた。

「アリア、俺は王宮に行くよ。
入隊の日までにも、護衛隊の研修を受けにいく。

あまり、会えなくなるな」


会えなくなる、その言葉が胸に突き刺さる。

新任の護衛隊の隊員は、宿舎生活なのだ。

痛む胸のうちを隠して笑顔を貼り付けた。


「……入隊、おめでとう。

時々、ここに帰ってくるの?」

「ああ、月に一度位は帰れるらしい。
本当かどうかは分からないけどな」

苦笑いをしながらシリルが言い、言葉を続けた。


「お前も、この先何かしらの任務に就くのだろう。

それでも、お前のことは、ずっと思ってる。

今は将来の約束はできないが、いつか、また2人で会えるはずだ」


そう言って、優しく抱きしめてくれた。


「分かってる、分かってるわ………またいつか、会える、はず、よね。

あなたを、愛してるわ」


「アリア………」


熱いキスを交わす。

2人で会う時間が、もう、少なくなっている。

分かっていた。


「俺も、愛してる………」



養成所の女性は、体の関係を持ってはいけない。

王宮に仕えることになる体。


2人はその掟を最後まで、守った。










< 15 / 279 >

この作品をシェア

pagetop