身代わりの姫


「では、厨房担当者から……」


王の護衛隊長が言うと、真新しい厨房服を身につけた、料理人たちが、並んだ。


一人ひとりと握手をして、王家の家紋がついた菓子箱を記念品として渡す。

握手と言っても、私が差し出した手を取り、片膝を着いて頬や顔の一部に当てて忠誠のポーズをとる。


もし、手に、口に何かを忍ばせていたら?


これが、本当の王女なら?


私なら何か異物を感じたらすぐに引き倒すことができる。


そんな訓練を受けていない王女なら?




怖くなり、手の感覚が研ぎ澄まされた。



念のためと、手を検査してから私のところに来ている。
それは、分かっているのに、不安になった。



笑顔で祝の品を渡しながら、掌の感覚に神経を集めていた。




握手の相手が兵士に変わり、護衛隊員に変わっていく。








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