身代わりの姫
朝、早くに目が覚めた。
浴室で体をキレイにして、部屋に置いてあった、リリア用の部屋着を着た。
部屋がノックされて、マアサが顔を出した。
「少しよろしいですか?」
頷いた。
「王女付きの侍女は、王妃の侍女の直属として働いてもらうことになりました。
それもこれも、結婚の為、という理由です。
それから………王女は、朝食は自室で召し上がり、一人で食べる昼食や夕食は部屋やテラスで召し上がります。
来週には婚約を発表し、結婚準備に入ります。
来月末には、ここで式をして、バルテモン国でも式と披露宴を行います。
バルテモン国に入ってからのしきたりは、そのうち分かると思いますから、それも勉強していただきます」
頷きながら、乗り気ではない結婚準備にかかることが、嫌だと思う反面、リリアがいたこの王宮を離れることが少しホッとしていた。
マアサは、そんな私のことを、どう思っているのか、ただ一人の味方であり、秘密を共有する仲間のような親近感が湧いた。
「私は、あなたが生まれたとき、そばにいました。
本心では寂しく思いますが、ご結婚されても、あなたなら幸せになれるのではないかと、思いますよ。
それから、アリア様を知っている人は、王宮にいますか?」
よく考えてから言った。
「…………王太子の護衛隊の………シリルは養成所で一緒に育ちました」
「では、アリアが亡くなったと、レオ様から知らせてもらいましょう。
では、まだ静かなうちに王女の部屋に移りますよ。
このカバンに、あなたの私物を入れてください。
捨てるものはこの袋に……
20分後にまた来ます。
20分後には、あなたは王女なのですよ?
よろしいですね」
頭が、ズンと重くなった。