冷徹社長の容赦ないご愛執
*


 連れて行かれたのは叔父の店からそう遠くない場所。

 エレベーターで上昇してきた地上三十三階は、高い天井の途中にもう一階分のフロアを作れそうなほど広々としたバーラウンジだった。

 高い天井までガラスを張られた窓際のソファ席からは、きらきらと瞬く都会の夜景が一望できる。

 会社の窓からも夜景は見えるけれど、高級感あふれるお店の雰囲気がその美しさに拍車をかけていた。


「彼女には体に負担のかからない食事を。
 それと飲みやすい白を二つ、お願いします」


 ウエイターに迷いなく告げる社長へ、夜景に囚われていた視線を引き戻した。

 窓を背にしたダークグレーのファブリックソファは、長い脚を持て余す社長の雰囲気にとても馴染む。

 柔らかな明かりを灯しているだけの照明が、端整な顔の陰影を妖し気に浮かばせていた。


「勝手に注文したけど、よかったか?」


 深みのある声がゆったりと尋ねてくるものの、夜景と同様の見目麗しい美青年に、目は惹きつけられっぱなしだ。
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