冷徹社長の容赦ないご愛執
「ええ、佐織さんはとても仕事熱心で、こちらはいつも助けてもらっていて……」

「“仕事以外でも”、……ご迷惑をおかけしてはいませんか?」


 なにが気にくわないのか、社長の言葉にあえて被せてきた大和の声に刺々しさを感じた。

 “仕事以外”という部分を強調して言ったのには、なんの意図があるの?

 プライベートでも、社長が私と親密な関係にあると、本気で思っているんだろうか。


「大和、だからそういうんじゃないって……」


 嫌な予感が的中し、冷や汗が出る。

 変な誤解をしているらしい大和を止めようとすると、


「いえ、迷惑だなんてとんでもない。とてもよくしてもらっていますよ。この間も叔父さんが経営されてるお店にお誘いいただきまして、ご挨拶させていただいたところです」


 社長が感情の見えない笑顔で、丁寧に大人の言葉を返した。

 大和の大人げなく噛みつくような物言いとは対照的に、とても落ちついた態度を見せる社長に、胸がきゅっと小さな音を立てた。
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