冷徹社長の容赦ないご愛執
「大和が嫉妬するのも仕方ないよ」

「嫉妬、って……?」


 二ヤついていた顔から、まずい、といった表情に変えた詩織は、私から視線を逸らして白々しく空をあおいだ。


「嫉妬してたの? あいつ。まさか社長に? どうして……」


 そこまで口にして、ちらりと私に戻ってきた詩織の視線は、観念したように私を見据えた。


「たぶん、気づいてないのはお姉ちゃんだけかもね」

「え……?」

「ずっと好きだったんだよ、お姉ちゃんのこと」

「誰が?」

「大和だよ。
 もしかしたら、社長さんもすぐに気づいたかもしれないね、大和の様子見て」


 結構鋭そうだし、と付け加えられた言葉に、さっき社長が言っていたことを思い出した。


 ――『彼のほうが一方的に想いを寄せていたってとこか』


 他人の社長の目から見ても、大和のあの様子はそう思われるほどの態度だったらしい。

 だけど、そんなことを言われても……


「……困る……」


 呟いた言葉は、楽しく食事をしていた気持ちを鎮めてしまった。
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