孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
「私もね、自分が居るべき場所、見つけられそうなの」

「あ。やっぱり社長さんだ」


 うん、と恥ずかしげにうなずいて見せると、詩織はにっこりと微笑んだ。


「あ、でも恋人とかじゃなくて……本当に仕事のパートナーとしてだよ。橘社長は、私を見ていてくれたの。誰も気に掛けなかった私のことを、ずっと」

「へえ」

「社長は私を必要としてくれてるんだって思ったら、今の仕事に自信が持てるようになったっていうか……」

「その社長さんが、お姉ちゃんのいるべき場所なんだね」


 心の底からそうだと言える自信はまだないけど、小さく「そうかもしれない」と呟いた。


「だからね、詩織が私の居場所取ったなんて思うことないから。たぶん、私じゃ女将は務まらなかったと思う。詩織みたいに、周りのことにもちゃんと目を配れるような人じゃなきゃ」

「そう言ってもらえると、救われるよ」


 ふふふ、と姉妹で和やかな笑いをひとしきり交わし合うと、詩織は部屋を出ようと足をすって後ろに下がる。


「それじゃあ、ごゆっくり」

「うん、ありがとう」


 三つ指をつき丁寧に頭を下げた詩織。

 ひとつひとつの所作はとても品がよく、やっぱり女将として見合うのは詩織のほうだとあらためて納得する。
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