冷徹社長の容赦ないご愛執
「佐織」
ちゃぽんという波の打つ音が、電話を介さずはっきりと耳に届く。
その情緒的な音に乗せるように、社長は静かに口を開いた。
「来ないか、……部屋に」
しっとりと言われたものだから、その言葉に色気を感じて胸が弾けた。
「え……」
ひとり飲みはつまらないから一緒にどうだ、と言われているだけだとわかっている。
それなのに、どこかで見たことのあるドラマのシチュエーションのようで、大人な雰囲気を想像してしまい、顔がしゅっと赤くなった。
「なに期待してるんだよ、スケベだな」
「ちっ、違います!」
そんな私の羞恥に気づいた社長は、ニヤリと笑って私をからかってくる。
「別にいいぞ、お前なら」
「そんなこと……っ」
「なんだ、したことないのか、“そういうこと”」
「セクハラですよ……⁉」
「なんのことだと思ってるんだよ。夜中に家抜け出すって話だろうが」
「な、な、な……」
「欲求不満か? そういや叔父さんも俺を“初めての彼氏”って言ってたもんな」
さっきまでのはかなげな瞳の色は幻だったかのように、意地悪に目を細める社長にむうと膨れてみせる。
ちゃぽんという波の打つ音が、電話を介さずはっきりと耳に届く。
その情緒的な音に乗せるように、社長は静かに口を開いた。
「来ないか、……部屋に」
しっとりと言われたものだから、その言葉に色気を感じて胸が弾けた。
「え……」
ひとり飲みはつまらないから一緒にどうだ、と言われているだけだとわかっている。
それなのに、どこかで見たことのあるドラマのシチュエーションのようで、大人な雰囲気を想像してしまい、顔がしゅっと赤くなった。
「なに期待してるんだよ、スケベだな」
「ちっ、違います!」
そんな私の羞恥に気づいた社長は、ニヤリと笑って私をからかってくる。
「別にいいぞ、お前なら」
「そんなこと……っ」
「なんだ、したことないのか、“そういうこと”」
「セクハラですよ……⁉」
「なんのことだと思ってるんだよ。夜中に家抜け出すって話だろうが」
「な、な、な……」
「欲求不満か? そういや叔父さんも俺を“初めての彼氏”って言ってたもんな」
さっきまでのはかなげな瞳の色は幻だったかのように、意地悪に目を細める社長にむうと膨れてみせる。