冷徹社長の容赦ないご愛執
 和モダンな空間にうっとりと頬を染める私の後ろで、ドアの閉まる音がする。

 視線を右側へ移すと、ダブルベッドがふたつぴったりとくっついて並べられている部屋があった。

 社長にからかわれたさっきのことが頭をよぎる。いまだ想像の域でしかない男女の色事を彷彿とさせ、心臓が飛び出そうなほど大きな音を立てた。


「なに飲む? いろいろ置いてあったぞ」


 社長は、和室の脇にあるワインセラーから翡翠色の小さめのボトルを取り出してくる。

 急に声をかけられるなり顔がぼんと火を噴き、今ごろになってようやく、社長とふたりきりであることを意識した。


「しゃ、社長と同じものを……」


 社長はセラー横の棚からグラスを取り出し、窓際のテーブルの方へと進んでいく。

 浴衣姿の色気がますます私の心臓の脈を急かす。


「佐織、なにしてる」


 和室入り口に突っ立ったまま動けなくなる私を、社長は不意に呼びつけた。

 ただでさえ鼓動を速めていたのに、逃げられないほど奥に私を誘い込む声音に、さらに不整脈を起こしそうになる。


「し、失礼します……」


 和室を横切るとき、視界に入ったベッドルームから大げさすぎる動きで視線を逸らした。
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