孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
 なんという経費の無駄遣いをしてくれたのだと、誰もが呆れ返っていた社長室の高級感あふれる仕様は、今となってはどうだろう。

 机上で光る“President”――<社長> と書かれた金のプレートは、まさにこの橘社長を待っていたかのように、今は品位高く輝いて見える。

 座る人が違えば、こうも身の丈の相応さを見せつけることができるのだと、この若き社長は体現しているようだ。

 今この時のためにこの社長室は構えられていたのだと、心の底からそう思っていると、


『今日のスケジュールはどうなってる?』


 これまでの虚無感を感動に変えている私を現実へと無理やり連れ戻す冷めた声に、ぱちぱちとまばたきをした。

 気を抜いていたはずの秀麗な顔が、デスクに片肘をつき軽い拳で顎を抱えて私を見つめていた。

 なにもかもを統べてしまいそうな瞳に射抜かれ、胸がどきっとわななく。


『は、はい、このあとは、社内を案内いたしまして、各部署の部長と顔合わせを……』

『社内の案内?』


 秘書として、しっかりと頭に入れておいた社長の予定を告げると、切れ長の目元は眉間に深いシワを刻んだ。
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