孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
『いちいち指示しなきゃ動けないのか、ここの連中は』


 姿勢を戻すと、重厚なデスクにつき脱力して革張りの椅子にもたれた橘社長が、もう一度深いため息を吐いた。

 色味の薄くなった水色の空を背景に、滑らかな鼻筋の横顔が無防備にも綺麗な輪郭を縁取る。

 本当に、こうやって見ているだけなら、自分の奥底に眠る女の本能がこそばゆくくすぐられてしかたない。

 そしてその見目に見合った高級感が、この人のあふれるほどの魅力をさらに際立たせているのだ。


 今まで何度か、この席に座る元社長の姿を見たことはある。

 けれど、あのふくよかなお腹を抱えた人には、ある意味馬子にも衣装的な感じが否めなかった。

 この社長室の床をモダンなフローリングに張り替えたのも、一体いくらしたのか経理の方々の目を剥いたであろう黒塗りのエグゼクティブデスクも、元社長の浅田室長がしつらえたもの。

 自分の肩書きを存分に振りかざし、その名に恥じぬ環境に造り替えたのだ。
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