孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
「荷物届けてもらったのか」


 自分の心に問いかけていた私の思考を遮った声にはっと顔を上げる。

 いつものスーツ姿とは違うグレーのタートルネックにブラックジーンズを合わせた休日バージョンの長身が、綺麗めジャケットに袖を通しながら現れた。


「は、はい。先ほど妹が……」

 
 どきっとする胸が、社長を意識しているのだと気づかされ、動揺しながら泳ぐ目を逸らす。

 浴衣も憎いほど似合っていたけれど、オフなスタイルの社長も抜かりなく美麗だ。


「き、着替えてきます……」


 眩しいほどに当てられるイケメンな長身を避けるように、うつむいたまま洗面所へ向かおうとすると、バッグを抱えた私の腕を大きな手のひらが捕まえた。

 かくんと前のめりになる私の腰はいとも簡単に引き寄せられて、はずみでバッグが床に落ちてしまった。


「朝食は九時半までだと聞いてるから、仕度急げよ」


 力強い腕に抱えられ、耳に寄せられた社長のやわらかな声音に、心臓がけたたましい音をかき鳴らす。


「……っ、はい……!」


 いい子だ、と満足したように呟いた社長は、私のこめかみに唇を触れさせる。

 やわらかな感触に、全身の血が羞恥に沸き立った。
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