孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
 一緒に暮らすことはまだ了承していないのに、すでにそのつもりの社長に、適切な断り方なんてあるのだろうか。

 もし断ってしまったら……社長はどんな顔をするだろう。

 魚を見るあの子どものようなキラキラとした瞳を、曇らせてしまうことになるかもしれない。

 流れる荷物を目で追う社長を横から見上げ、昨夜の話を思い出す。

 『俺の帰る場所にならないか』と言っていた彼に、そもそも私は断ろうだなんて思ってはいなかったんじゃないだろうか。

 私の視線に気づく社長がこちらを見下ろしてくると、条件反射に胸はときめく。

 すると、その向こう側に突然、ふわりと白い人影が迫ってきた。


「Yusei!!」


 『ユウセイ』と叫んだ声にぱっと振り向いた社長が、誰かにがっしりと抱きつかれる。

 そのはずみで私の手は社長から離れてしまった。
 

「I missed you! Yusei!」
<会いたかった! ユウセイ!>


 綺麗な英語で社長の名前を呼ぶその人は、ほっそりとした手を広い背中に回してきた。
< 219 / 337 >

この作品をシェア

pagetop