孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
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 いくつか見て回った物件のどれもが、庶民が手を出せるような部屋ではなく、その中でも社長が選んだのはリビングの向こうに庭のように広いバルコニーのある部屋だった。

 お家賃に関しては、最初から私がどうこう口を出せるはずもなく、素知らぬ顔をするだけだ。

 実際に入居できるまでは少し時間が必要で、実際に住めるのは最短でも十日後くらいらしい。

 それまで社長は結局、あの都内でも有数の高級ホテルに宿泊することになる。

 まあどちらにしても、社長にとっての“普通”というのは、庶民のお金の使い方とはかけ離れた世界であることに変わりはない。


 不動産を見た帰り、夕食にとやってきた叔父の店。

 ついて来るなという社長に、『僕はサオリと夕食が食べたいんだ』と私を逃げ道にして、強引についてきたルイさんと三人で寿司店の個室にいる。

 
 昨日から贅沢し過ぎてるな……来週は摂生しないと、太る。


 先に出されていた緑茶に口をつけ、いい香りにほっと一日の疲れを癒してもらっていると、


『は? ホテル取ってない?』


 社長の呆れたような声に、隣を見上げた。
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