孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
 見えない圧で目の前に立つルイさんに、心を壊されてしまわないよう精いっぱいの強がりで見返す。

 すると、それまで無表情だった青い瞳が、ふっとを固さを崩した。


『健気な子は好きだよ、サオリ』


 だけど、唐突なことを言いだすルイさんが口にした言葉には、なんの気持ちも感じられない。

 それがなんだか怖くて、それ以上は逃げられない足をギリギリまで後ずらせた。


『ユウセイにはもったいないなあ』


 くすりと口の端で笑うルイさんは、私の背後の壁にとんと手をついた。


『ねえサオリ。僕のものになりなよ、かわいがってあげるから』


 壁に追われて逃げられない私の頬を、ルイさんの白くて冷たい指がなぞる。

 あまりの冷たさにぞくりと肩を震え上がらせ、顔を背けようとすると、冷たい手のひらが逃がさないとばかりに私の顎を掬い上げた。

 すかさずふっと顔を寄せてくるルイさんの意図がわかって青ざめると、どこからかピリリとコールする電話の音が聞こえてきた。
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