孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
『もし仮に、そうだったとしても……私はそれでも構いません』


 私が社長のそばにいることで、彼の心が安らぐのならそれでいい。

 それが日本にいる間だけの一時的なものだったとしても、社長が私を必要としてくれていることはたしかだ。


『社長はたしかに、“私だから”秘書に指名したと言ってくださいました。私にはその事実があるだけで十分です』


 いつかは海の向こうへ帰ってしまう社長。

 期限があるのだとわかっているのなら、なおさら、彼のために全力でサポートしてあげたいと思う。


『だけど……』


 私を見つめてくれる社長の、あの真っ直ぐな強い瞳に、ついて行きたいと思った気持ちが間違っていたとは思わない。


『私は信じていたいです。社長の真意がどうであったとしても、疑心にまみれた心では彼を支えてあげられないから』


 私を惑わそうとする青い瞳に向けて、最初から心の真ん中にある揺らぎない思いをぶつける。

 私のいるべき場所を作ってくれた社長を、尊敬していることに変わりはないから。
< 253 / 337 >

この作品をシェア

pagetop