孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
 一体、なんだったの……

 ルイさんの圧に解放されとんと壁にもたれると、肩にどっと疲労が乗っかってきた。

 僕のものにならないかと言ったあれが、彼の本心でないことはわかった。


 ――『あいつにだけは、絶対に惚れるな。絶対にだ』


 社長があんなことを言っていたのは、私を独り占めしようとしてくれているからなのかと自惚れを湧かせていた。

 けれど、ルイさんがいろんな女の子に対してそういうことを口走っているのだとしたら、軽薄な彼の言葉を鵜呑みにするなと言われたことが、どういう意味を込められていたのかわかった気がした。

 きっとルイさんは、あの王子様のようなマスクでたくさんの女の子を虜にしてきたに違いない。

 そしてたぶん、泣いてきた子もいるんだろう。

 社長はそれを懸念してあんなことを言ったのかもしれない。

 だけど、どうしてルイさんは私なんかに……

 この会社にはたくさんの女子社員がいる。さっき一緒にいた同僚の子だって、男性から誘われたことは何度もあると言っていた。

 私よりずっと綺麗な子も、可愛い子も。ある意味彼であればよりどりみどりだ。
< 256 / 337 >

この作品をシェア

pagetop