孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
 それなのに、わざわざ私なんかのために、社長には待っている子がいることを暴露してまで、私を社長から遠ざけようとするなんて……

 まだ社長に本当のことを確かめていないのに、やっぱり胸がチクチクとした痛みを感じていると、ふとなにかが引っかかったような気がした。


 ――『今はそういうの、やめてあげてくれない?』


 過った言葉に違和感を覚える。

 ルイさんはもしかして、“私のため”なんかじゃなく“社長のため”に私を引き離そうとしたんじゃ……

 そう考えるとしっくりくる。

 それと同時に、社長の親友ともいうべきルイさんに、私が社長のそばにいることを認めてもらえていないことになるのではないかと思う。

 秘書として社長を支える立場にある私が、仕事の妨げになってはいけない。

 ルイさんはそのことを教えてくれたんじゃないだろうか。

 自分がちょっとした不安にさいなまれているからって、それを社長にぶつけるなんて部下としてはあるまじきことなのかもしれない。
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